日本酒づくりの格言「一麹ニ酛三造り」とはどんな意味なのか?
日本酒づくりのポイントを一言で表した格言が「一麹ニ酛三造り」です。
日本酒づくりに興味を持っている方であれば一度は聞いたことがあるかもしれません。
この格言は日本酒づくりの本質を端的に表したもので、今なおつくり手の間で語り継がれています。
では「一麹ニ酛三造り」とは一体どんな意味なのでしょうか。
今回は、日本酒づくりの格言「一麹ニ酛三造り」とはどんな意味なのかについて、どこよりもわかりやすくご紹介します。
そもそも「一麹ニ酛三造り」とはどんな意味なのか?
「一麹ニ酛三造り」の読み方は「いちこうじ・にもと・さんつくり」と読みます。
「一麹」は「いちきく」ともいいます。
意味は次の通りです。
1⃣一麹とは?
一麹とは、酒づくりにおいて一番大事なのが「麹づくり」であることです。
2⃣ニ酛とは?
ニ酛とは、酒づくりにおいて二番目に大事なのが「酒母(しゅぼ)づくり」であることです。
3⃣三造りとは?
三造りとは、酒づくりにおいて三番目に大事なのが「醪(もろみ)を仕込む」ことです。
日本酒づくりではこの3つが最も重要な部分といわれています。
また「一麹ニ酛三造り」とは、麹づくりの工程・酒母づくりの工程・醪仕込みの工程が大事であるという意味でもあります。
「一麹ニ酛三造り」での蒸米の麹米・酒母米・掛米の割合
「一麹ニ酛三造り」を成功させるには、蒸米を割合に応じて、それぞれの工程に振り分ける必要があります。
酒米を蒸米にした後に、一旦冷やし、麹米・酒母米・掛米の3つに分けます。
麹米・酒母米・掛米の割合は次の通りです。
①麹米とは?
麹米とは麹をつくるためのお米(蒸米)のことです。
お米を蒸して「蒸米」にしたところに、麹菌をかけて繁殖させて「米麹」をつくります。
蒸米全体のうち、麹米は20〜30%です。
➁酒母米とは?
酒母米とは酒母をつくるためのお米(蒸米)のことです。
酒母とは酵母を大量に増殖・培養させたもののことです。
酒母は醪を仕込むための発酵スターターとして活躍します。
蒸米全体のうち、酒母米は10%です。
1⃣酒母米が少ない理由は?
酒母米が蒸米全体の10%で少ない理由は、コストを下げるためです。
酒母米が多ければ発酵は早くすすみますが、その代わり大量の酒母が必要になるので日本酒を販売する時のコストとなって跳ね返ってくることになります。
そのため醪を仕込む時には、三段仕込みにして、少しずつ発酵タンク内で酒母を増殖・培養させながら同時に発酵をすすめています。
➂掛米とは?
掛米とは「醪」をつくるための米(蒸米)のことです。
「醪」とは、蒸米、米麹、酒母、仕込み水を発酵用タンクに入れて、発酵をさせた日本酒の原酒の前段階の液体のことです。
醪づくりのことを、醪を仕込むといいます。
蒸米全体のうち、掛米は70〜80%です。
「一麹ニ酛三造り」成功のポイントとは?
こちらでは「一麹ニ酛三造り」成功のポイントについて詳しくご紹介します。
①一麹(麹づくり)成功のポイントとは?
一麹(麹づくり)成功のポイントとは、温度管理です。
麴菌は熱すぎても、寒すぎてもダメです。
麹菌は48℃を超えると死滅し、30℃以下になると発酵しません。
ちょっとした気のゆるみが原因で、麹菌をダメにしてしまいます。
温度管理のやり方は、温度が上がりすぎたら空気を入れて冷やし、温度が低ければタンクの周りに毛布などをかけて保温をしてください。
必ず30〜40℃内を厳守してください。
そうすることで元気で強い麴菌が繁殖してくれます。
➁ニ酛(酒母づくり)成功のポイントとは?
ニ酛(酒母づくり)成功のポイントとは、雑菌や野生酵母を駆除することです。
酒母をつくる際に悪影響を及ぼすのが雑菌や野生酵母です。
それらを駆除するために「乳酸」を投入して酸の力で雑菌や野生酵母を駆除する必要があります。
おすすめするのは生酛系酒母・速醸系酒母のいずれかを活用することです。
〇生酛系酒母と速醸系酒母の違い
酒母にはいくつか種類があります。
こちらではよく使われているポピュラーな2つの酒母についてご紹介します。
1⃣生酛系酒母
生酛系酒母とは自然界の乳酸菌を使って、乳酸菌に乳酸を生成してもらう酒母のことです。
生酛系酒母の読み方は「きもとけいしゅぼ」と読みます。
2⃣速醸系酒母
速醸系酒母とは、人の手で人工的につくった醸造用乳酸を投入してつくる酒母のことです。
速醸系酒母の読み方は「そくじょうけいしゅぼ」と読みます。
現在はタイパをあげるために、速醸系酒母を使った酒母づくりが主流になりつつあります。
➂三造り(醪の仕込み)成功のポイントとは?
三造り(醪の仕込み)成功のポイントとは、醪を仕込む時には、複数回に分けて掛米を投入することです。
その理由は一度に大量の掛米が投入されると、酵母菌の増殖が間に合わないからです。
発酵用タンク内の酸度が弱くなり、雑菌・野生酵母の繫殖が優位になるため「醪の仕込み」が失敗するかもしれません。
成功するには、掛米を3回に分けて投入する「三段仕込み」をすることです。
そうすることで、酵母菌の増殖のスピードに合わせ「醪の仕込み」を成功させることができます。
まとめ
今回は、日本酒づくりの格言「一麹ニ酛三造り」とはどんな意味なのかについてご紹介しました。
「一麹ニ酛三造り」は日本酒づくりの先人の知恵の集大成です。
現在もこの格言を厳守して、高品質な日本酒がつくられています。
おいしい日本酒を飲んだ時には、ぜひ先人の知恵を思い出してみてはいかがでしょうか。
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