日本酒の出来を左右する「醪」とは何か?「醪」の基礎を徹底解説!
日本酒をつくる上で最もコアな工程といえるのが「醪」です。
醸造に詳しい人からするとまさに心臓部といえるほど重要な工程になります。
その理由は「醪」の出来が日本酒の出来を左右するからです。
では「醪」とは一体どんなものでしょうか。
今回は、日本酒の出来を左右する「醪」とは何か・「醪」の基礎を徹底解説について、どこよりもわかりやすくご紹介します。
そもそも「醪」とは何か?
醪とは日本酒の原酒になる前段階のドロドロした液体のことです。
簡単にいうと「日本酒の原料が発酵した状態の液体」のことを「醪」と呼びます。
醪の読み方は「もろみ」と読みます。
日本酒の原料とは何か?
日本酒の原料は次の4つです。
1⃣酒米の蒸米(むしまい)
2⃣「米麹(こめこうじ)
3⃣酒母(しゅぼ)
4⃣仕込み水
この日本酒の4つの原料を発酵させると「醪」になります。
「醪」は醸造製品にはすべて存在する
「醪」は日本酒だけでなく「醸造」という工程がある醤油・味噌・味醂つくりには必ず存在します。
違いは材料と出来上がった製品が違うだけです。
日本酒の材料で「醪」をつくって、絞って濾すと日本酒の原酒が出来上がります。
「醪」からできる3種類のお酒の違い
実は「醪」は濾し方によって、次の3種類のお酒に分かれます。
ちなみに「濾す(こす)」とは、酒蔵によってやり方が異なりますが「醪」を布で搾ることをいいます。
濾すことによってお酒と搾り粕に分離させる工程です。
①どぶろく
1つ目のお酒はどぶろくです。
どぶろくとは、できあがった「醪」をそのまま濾さずに製品化したお酒になります。
つまりどぶろくとは「醪」そのものです。
もし「醪」がどんなものかを知りたい時には、どぶろくを飲んでみれば「醪」がどんなものかがわかります。
そのためどぶろくは「もろみ酒」とも言われます。
ただしどぶろくは「清酒(日本酒)」ではありません。
どぶろくの扱いは「その他の醸造酒」として扱われています。
どぶろくは日本酒の原材料がそのまま残っているため、白濁が濃く、ツブツブ感があり、とろりとした口当たりで、甘酒のような甘味と旨味を感じることができるお酒です。
➁にごり酒
2つ目のお酒はにごり酒です。
にごり酒とは、できあがった「醪」を一度濾して製品化したお酒です。
にごり酒の特徴は「醪」を濾したお酒に「澱(おり)」と呼ばれる濾しきれなかった微細な固形成分が残ったお酒をにごり酒と呼びます。
「醪」を荒い布でこせば白濁が強いにごり酒になり、細かい布でこせば薄い白濁が残るにごり酒になります。
にごり酒は「醪」を一度濾しているので「清酒(日本酒)」に扱われます。
清酒との違いは、濾しきれない「澱(おり)」が残っているので、清酒と比べると味わいにクリーミーさが残ることです。
にごり酒は澱の残し方によって、多い順から「あらごし」「うすにごり」「おりがらみ」に呼び方が異なり、にごり酒を選ぶ目安になります。
➂清酒
3つ目のお酒は清酒です。
清酒とは、できあがった「醪」を「澱(おり)」が一切残らないように濾したお酒です。
清酒になると、見た目が透明で白濁や米粒が一切なく、味がキリッとしています。
このように「醪」は濾し方によって、タイプがまったく異なるお酒をつくることが可能です。
日本酒の「醪」のつくり方とは?
日本酒の「醪」のつくり方は、大きな発酵用タンクに、まず酒母を入れ、米麹、蒸米、仕込み水を加えて発酵させます。
発酵には通常3週間から1カ月くらいかかり、発酵が完了すると「醪」が出来上がります。
一般的にこの工程を「仕込み」といいます。
ただし日本酒の場合には、材料を一度に全量入れることはありません。
その理由は、全量を一度に入れてしまうと、酵母菌の増殖が間に合わないからです。
もし酵母菌の増殖が間に合わないと、空気中にある雑菌や野生酵母の繁殖が優位になり「醪」づくりが失敗してしまうかもしれないからです。
日本酒の「醪」つくりを失敗しないための最もポピュラーな仕込みを「三段仕込み」といいます。
「三段仕込み」とは何か?
「三段仕込み」とは、発酵を3段階に分けて仕込む方法のことです。
簡単に説明すると、酵母菌の増殖に合わせて、数回に分けて材料を投入し、ゆっくりと発酵させるやり方です。
これによりしっかりした日本酒の「醪」をつくることができます。
「三段仕込み」の流れ
「三段仕込み」の流れは次の通りです。
1⃣1日目の工程 初添(はつぞえ)
初添とは、酒母を発酵用タンクに入れ、酒母の2倍の量の米麹、蒸米、仕込み水を加えて、櫂棒(かいぼう)を使ってよくかき混ぜて発酵を促すことです。
2⃣2日目の工程 踊り(おどり)
踊りとは、材料を何も加えないことです。
発酵の様子を見ながら、櫂棒を使ってよくかき混ぜて、酵母菌の増殖を促します。
3⃣3日目の工程 仲添(なかぞえ)
仲添とは、第2段階目の仕込みのことです。
初添で使用したさらに2倍の量の米麹、蒸米、仕込み水を加えて仕込んでいきます。
4⃣4日目 留添(とめぞえ)
留添とは、三段仕込みの最終段階のことです。
仲添で使用したさらに2倍の量の材料を投入して発酵を促します。
留添が終わって、およそ3週間〜1カ月ほどすると発酵が完了して「醪」の出来上がりです。
まとめ
今回は、日本酒の出来を左右する「醪」とは何か・「醪」の基礎を徹底解説についてご紹介しました。
「醪」こそは、日本酒づくりの「キモ」となる工程です。
そのため杜氏や蔵人たちの力量が最も問われます。
日本酒を選ぶ時には、ぜひ「醪」の仕込みにも注目してみることをおすすめします。
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